私が今年から所属させて頂いている猟友会五條支部の巻狩(グループで獲物を追い詰めて捕獲する猟)に参加してきました!
五條市といえば吉野川を挟んで南の山奥まで広がっている山間部が大部分を締める市です。その山間部に入る手前に集合場所があり、早朝に私を含む9名の鉄砲撃ちと3匹の猟犬が集合しました。
ほとんどの方が初対面でしたが、師匠の紹介ということもあり、皆さん快く私の事を受け入れてくれました(^O^)
『さぁ行こかー』
全員それぞれの車に乗り込み山奥へと出発しました!
私はマチという獲物を待ち伏せる役目をすることになっていたので、山の上と下に別れたチームの上側に居てました。山の下から犬を放って上に向かって獲物を追い詰めていきます。
私がマチに付いたのはちょうど小さな谷になっている一番奥のマチ位置でした。
山の中でひとりぼっち、とてもあたりは静かでメンバーそれぞれ持ち場について周りに人の気配も無くなりました。
足場の確認、矢先の安全確認をして、緊張しながらスラッグ弾を1発装填して待機していました。射撃場以外の装填はこれが初めてなので、とても特別な緊張感を味わい、この初心の緊張感はいつまでも忘れてはいけないなと肝に命じました。銃の所持許可を取るにあたり、過去の悲惨な事故例を頭に入れてるので、確認の重要性は十分理解しています。安全第一で猟をすることを常に心掛けたいと思います。
しかし、予想していた方向と真逆の方向から何かの気配と足音らしき物音が聞こえてきました。
首だけを左後方に向けて後ろを確認すると、奈良公園では見ることが出来ないほど立派な角を持った雄鹿が私の方に向かって来ていました。その後ろにはもう少し小さな雄鹿一頭と雌鹿三頭が群れとなって歩いていました。私はちょうど良い太さの木の根を足場にして静止していたので、鹿の群れは私の存在に気づくことなくどんどん私の方に近づいて来ます。
私は一旦、銃を真上に向けて木の幹をかわし、体を反転させて後ろから近づいて来る立派な雄鹿の頭にスコープの照準を合わせました。
『仕留められる』
今引き金を引けば確実にこの雄鹿を仕留められる。そう思った瞬間引き金を引くことを躊躇ってしまいました。
反対方向は完全に矢先の安全確認をしていなかったことと、あまりに立派な鹿を見られた感激で引き金を引くことに迷いました。
その躊躇した瞬間、スコープ越しにその雄鹿と一瞬目が合いました。私はあの瞬間の感覚を一生忘れないと思います。おそらく群れのリーダーであろうその雄鹿が私の存在に気づくなり、群れは先輩たちが居る方へ方向転換して走って行きました。
そっちはダメだ!
そう思った時でした。先輩猟師たちの銃声が次々と響き渡りました。
無線からは鹿が走る方向を支持する声が聞こえて来ます。何発も銃弾を受けながらその雄鹿は走っているようです。
『私があの時仕留めていれば…』
私は至近距離から頭に照準を合わせていたので、撃っていれば即死させていたと思います。躊躇うということはこういう事なのだと実感し、もうこのミスは繰り返さないと心に決めた瞬間でもありました。
後ほど変わり果てた雄鹿を私自らナイフで解体し、肉は持ち帰りました。お店の賄いカレーになる予定です。
このやり方では食肉として販売することは不可能です。しかし、国の方針に従い猟師は駆除を続けています。料理人としてこのジレンマと闘いながら、自分に出来る事を模索していきます。