射撃教習

結局ほとんど寝られずに射撃教習当日の朝を迎えました。余裕を持って6時20分ごろに家を出ました。

秋の朝を感じながら気持ちよかったです

目的地は京都市右京区の山奥にある京北綜合射撃場です。京都縦貫自動車道を北上し八木東インターチェンジを降りてひたすら山奥を目指します。

途中のんびり田舎道を堪能しながら走っていたので、到着時間は9時過ぎになりましたが、教習開始の10時にはまだまだ余裕があったので、射撃場内を少し拝見させて頂きました。

山の上ということもあり涼しい気候でした
事務所や教習室、ガンロッカーのある建物
建物を入るなりどでかい剥製

事務所のある建物には入るなり最初に目を引いたのは、壁から首が生えているように飾られたヘラジカの剥製でした。ツノの大きさは私が両手を広げて抱えられないほどの大きさでした。実物は簡単に普通車を跨いでいける大きさだと想像できます。こんなのと山で遭遇したらビックリですね。(この鹿はアメリカ大陸、ユーラシア大陸の北部に分布するので日本には居ません)

建物を入って山の斜面を下るように設置された階段を下ると事務所と待合カフェ的なスペースがあり、そこでコーヒーを頂きながら、射撃練習に来られていた地元の猟友会のおじさん達としばらく雑談させて頂きました。

90%のワクワクと10%の緊張で待ち時間を過ごしていると、間もなくしてキタヤマトガンサービスのYさん(私がここで師匠と呼んでいる)が来られました。たまたま同じ日に、こちらの射撃場でお客さんの初打ちに同行されていました。そのYさんがしばらくして、『こちらが今日の先生です。』と教官のOさんを紹介してくださいました。Oさんは私の父と同じとはいかないまでも、近い世代だと思います。銃を構える仕草の時の眼光が鋭いのが印象的な気さくな方でした。

『ボチボチ始めましょかぁ』と教官から声がかかり、小部屋へ案内されますと、どうも受講者は私ひとり。『今日は私ひとりだけですか?』と質問すると、『何人もでやってるとこもあるけど、人数多いとちゃんと教えられん。ひとりでやっても一日かかるからな。』とのこと。

小部屋で銃の取扱いの基本を学びました

午前中は小部屋で銃の取扱いの基本や、射撃場でのマナー、猟師としてのマナーなど私のこれからの目標に合わせた内容で講義を行って下さいました。実際に起こった事故などの話など、貴重なお話をして頂きました。ここでも銃を所持することの重大さを改めて認識しました。

いざ射台へ

そして、軽く昼食をとった後いよいよ射撃場で実弾を装填しての訓練です。まずは、静止したクレーを射抜くために、教官が25メートルくらいの位置にクレーを立てた状態で固定して、『じゃあこれ狙って撃ってみて。』とさっそく射撃命令です。クレーは直径15センチの円盤型で、それを静止した的として狙いを定める練習です。初めて撃った時の銃の衝撃は意外にもすんなり受け止める事が出来ましたが、後で教官に言わせると『力で全部受け止め過ぎ。』とのこと。それじゃスラッグ弾なんて痛くて撃てないよと言われました。的には一発で命中したので、じゃあ次は飛び出るクレーを撃ちましょうというのとで、さっそくクレーが飛び出る位置から真っ正面の射台へ立ちました。

『コールしたらあそこの下からクレーが飛び出てくるから、そしたらスッと追い掛けてさっきの照準合わせたところに追い付く瞬間に引き金を引くんや。』

私は言われた通りに照準を合わせて引き金を引きました。当たりません。教官は『遅い!クレーの下撃っとる!』その後も照準は合ってるはずなのに全く当たりませんでした。結局1ラウンドは25発中1発しか命中しませんでした。これでは失格になってしまいます。正直焦りました。照準を合わせたはずなのにクレーが弾け飛んでくれないのです。

小休止の後、2ラウンド目です。今度こそ当ててやる。そんな意気込みが裏目に出て、身体に力が入り過ぎて、当たらないうえに体力を奪われて手が震え出すという悪循環に陥りました。しかし、25発中7発は当たっていましたが、当たる根拠を見つけられずにいたので、焦りはさらに増していき3ラウンドに突入しました。この25発で当てる感覚を掴めないと、これは不合格になってしまうかもしれない。さらに焦りました。

教官に何度も射撃姿勢を修正され、どんどん身体に力が入ってしまい、射撃した反動を全て右肩で受け止めていたので、右の頬と右鎖骨あたりが痛くなっていました。しかし、ある瞬間、教官が何度も言って教えてくれていた『追い抜く時の100分の1秒を狙うんや。』その言葉の意味がわかったような瞬間がありました。クレーが上がって飛んで行く道筋どおりに照準を走らせて、照星(銃の照準を合わせるために銃身の先に付けられている突起)と中間照星(銃身の中間あたりに付けられている照星)を結んだ延長線上を通り過ぎる瞬間を狙って引き金を引くと、クレーが弾け飛びました。

これだ!そう思いました。

照準を正確にクレーの道筋に合わせて追いかけて、追い抜く直前の照準で引き金を引く、クレーが発射されてから引き金を聞くまでの、体の軸の動かし方とタイミングが少しわかったような気がしました。

そして最後の4ラウンド目。銃の点検、取扱い、マナーなどを含めて審査が始まりました。ここで減点になると射撃することなく失格になります。しかし、狩猟免許試験の時にもある程度やっていたので、なんとか射撃に入るまでの行程はクリア出来ました。

いよいよ笑っても泣いてもこれが最終ラウンドで試験です。

25発のうち最初の5発は最も当てやすい、クレーが飛び出す真後ろから狙える位置。ここで2回当てとかないと後は難易度が上がってしまいます。勝負の5発です。

1発目外れ。次こそは…

当たりました。そこから3連続で命中。角度を変えて難易度が上がっても命中と外すのを繰り返し、結局12発命中させることが出来ました。感覚を掴めたとは言えませんが、最後の最後で理屈が少しわかったような気がしました。

そんなこんなで、なんとか射撃教習を終えることができ、無事に教習修了証明書を受け取ることが出来ました。これで、所持許可申請に必要な書類が揃いました。

最初は90%のワクワクと10%の緊張と言っていましたが、最後は10%のワクワクと90%の緊張に変わっていました。

私はクレー射撃を楽しみたくて銃の所持許可申請をしている訳ではありません。あくまでも猟師として一人前になりたいからです。しかし、一人前の猟師とはどんな状況においても、銃を効果的かつ正確に扱える技量が必要だと思います。そのために次は自分の所持する銃で鍛錬に訪れたいと心底思いました。